海外FXトレードで安定した収益が出せるようになったら、節税にも目を向けましょう。
海外FXのトレード収益は雑所得なので、超過累進課税が適用されるため、収益が大きいほど、税率も高くなります。国内FXのように申告分離課税で税率が20%に固定されません。
海外FXで効率よく資産を増やしたいなら、節税方法も知っておきましょう。
中でも個人トレーダーにおすすめの節税制度はこちら。(おすすめ順)
- iDeCo:掛け金がすべて控除になる
- つみたてNISA:非課税枠800万円の分配金・譲渡益が非課税
- ふるさと納税:2,000円の負担で数万円の返礼品を得られる
- 青色申告制度:最大65万円の税控除、親族への給与が経費に
- 住宅ローン減税:住宅価格の1%を控除(10年間)
中でもiDeCoとつみたてNISAは、節税効果が非常に高く、かつ手続きも簡単なので、個人トレーダーでも利用しやすいです。
この記事では海外FXトレーダー向けの節税方法や控除制度などを詳しく見ていきます。
節税をする前に知っておきたい基礎知識
まずはFXトレーダーが収める税金に関する基礎知識をまとめておきます。
その1:海外FXのトレード収益は「雑所得」扱い
海外FXトレードで得られた収益は、雑所得扱いとなります。(アフィリエイト・IBも含む)
雑所得では、総合課税(超過累進課税)が適用されるため、収益が大きければ大きいほど、税率も高くなります。海外FXは日本の税制上で不利な扱いを受けているわけですね。
それに対し国内FXは申告分離課税で、税率が20%で固定されているため、収益が大きくでも税率は一定のままです。
FXトレードで年間1,000万円以上稼げる実力があるから、国内FXブローカーに切り替えましょう。税率が20%で固定されるため、支払う税金が少なくなります。
おすすめの国内FXブローカーについては、こちらの記事をご覧ください。
その2:支払う税金は「所得税・住民税」
個人FXトレーダーが支払う税金は、主に以下の2つ。
- 所得税:税率5%〜45%の超過累進課税
- 住民税:税率10%の「所得割」と5,000円前後の「均等割」
所得税は所得に課税される税金で、所得額が大きいほど税率も高くなる「累進課税」が採用されています。
所得金額ごとの税率はこちら。
4,000万円を超えた部分は、住民税と合わせて半分以上(55%)取られてしまいます。海外FXだと、億トレーダーになる旨味も少ないのです。
一方住民税は、課税所得の10%を支払う「所得割」と、所得に関係なく5,000円前後を支払う「均等割」の2種類に分けられます。
均等割は基本的に5,000円ですが、地方自治体によっては条例等により追加で300円前後上乗せされることもあります。
個人事業主だと他にも、消費税や個人事業税などを支払う必要がありますが、FXトレーダーは支払いが免除されています。
個人トレーダーが支払う税金は、基本的に所得税と住民税の2つと覚えておきましょう。
その3:税控除・経費を活用し、所得金額を低くしよう
先ほど紹介した所得税と住民税の2つは、どちらも所得金額に課税されます。そのため所得金額が大きいほど、支払う税金も高額になるわけです。
逆に言えば、節税で支払う税金を減らしたいなら、所得金額をできるだけ少なくすることが鉄則です。
所得金額を少なくする方法は、大きく分けて2つ。
まずは国が提供している控除制度を活用しましょう。つみたてNISAやiDeCo、青色申告制度や住宅ローン減税などを使えば、効率よく所得を圧縮できます。
これらの控除制度は国が推奨していることもあり、税務署に否認されるリスクも低いです。
経費を計上することで、所得を減らすこともできますが、経費はビジネスと関係のある費用のみ認められます。あまり濫用しすぎると、税務署から経費として認められないリスクもあるのです。
まずは国が推奨している節税制度を優先して使い、その後ビジネスに関係のある出費が出てきたら、経費として計上するようにしましょう。
その4:確定申告で納税額を確定させる
税金を支払う前には、確定申告を済ませましょう。
確定申告とは、個人が所得を計算し、所得額が記載された申告書を税務署に提出して、納税額を確定させる手続きのこと。サラリーマンだと会社が代わりに手続きをしてくれますが、個人トレーダーは自力で行います。
申告できる期間は、翌年度の2月16日から3月15日までの1カ月間。例えば2020年度の所得を確定申告をする場合、翌年の2021年に手続きをします。
申告方法はe-Taxによる電子申告がおすすめ。電子申告なら、書類を用意したり、郵送で送ったりする手間が省けます。
最近ではスマホでも確定申告ができるようになっており、その場合はカードリーダーも不要です。
なお電子申告をするには、事前にe-Taxの公式サイトでアカウント登録をしておく必要があります。
その5:確定申告ソフトで手続きの手間を減らそう
確定申告では入力項目が非常に多く、全部自力しようとすると、膨大な時間と労力がかかります。
確定申告をするなら、確定申告ソフトを使いましょう。アカウントをクレジットカードや銀行と紐付けておけば、自動で入力したり、費用に応じた勘定項目を提示したりしてくれます。
確定申告ソフトの代表はこちら。(おすすめ順)
白色申告をするなら、まずは弥生会計(白色申告)がおすすめ。 白色申告だけなら無料で利用できますし、macOSにも対応しています。
ただし弥生会計は、青色申告だと料金が月額8,800円と高くなってしまいます。
青色申告をするなら、確定申告ソフトは「マネーフォワード クラウド確定申告」がおすすめ。年間プラインの「パーソナルミニ」なら月額880円で利用できます。
またFXトレーダーは税務手続きもシンプルなケースが多いため、加入プランも1番安いものでOKです。
トレーダー・投資家向けの控除制度
効率よく所得を圧縮したいなら、まずは国の提供している控除制度を利用しましょう。
ここからはFXトレーダー向けの控除制度を見ていきます。
NISA・つみたてNISA・iDeCo
NISA・つみたてNISA・iDeCoは、国が投資家向けに提供している非課税制度です。
証券会社で特定口座を口座開設し、その口座で投資信託を購入することで、控除を受けられます。
非課税金額が大きめで、ほぼ誰でも利用でき、利用手続きも簡単なので、個人的にはかなりおすすめな節税方法です。
非課税制度の概要はこちら。(おすすめ順)
まずはiDeCoから利用しましょう。 掛け金すべてが控除対象となるため、節税効果が非常に高いです。
ただしiDeCoは60歳になるまで預けたお金を引き出せません。老後資金の積み立て目的で、生活に必要な資金は使わないようにしましょう。
2つ目のつみたてNISAも非課税枠は800万円と高額ですが、非課税になるのは分配金と譲渡益のみ。掛け金が控除対象になりません。
3つ目のNISAは非課税枠が600万円とさらに少なめ。またNISAとつみたてNISAは、どちらか1つしか使えないため、節税効果を重視するならつみたてNISAの方がおすすめです。
なおこれらの非課税制度を利用するなら、証券会社で口座開設して、インデックスファンド(投資信託)を購入する必要があります。
インデックスファンドの選び方については、こちらの記事をご覧ください。
国民年金基金
国民年金基金は、事業者やフリーランス向けの2階建ての公的年金です。
国民年金(基礎年金)だけでは受給額が少なく、老後の生活をカバーしきれないことがあります。そういった不安を解消するために、追加の年金制度として国民年金基金が生まれました。
掛け金は最大月額68,000円。さらに掛け金が全額控除の対象となるため、節税効果は非常に高いです。
ただし掛け金の上限は、個人型確定拠出年金(iDeCo)と合わせて68,000円になるため、iDeCoで68,000円以上投資している場合は利用できません。
国民年金基金とiDeCoの違いは以下の通り。(違いの比較記事へ)
国民年金基金は、国の基金が運用するため、予定利率は1.5%と低め。
それに対しiDeCoは、自分でインデックスファンドに投資するため、運用が上手ければ国民年金基金よりも高い利回りで資産を増やすことができます。
簡単にまとめると、安定性を重視するなら国民年金基金、リターンを重視するならiDeCoがおすすめ。
ふるさと納税
ふるさと納税は、地方自治体に寄付することで、寄付金額に応じた返礼品がもらえる制度です。
より具体的に言うと、自分で選んだ自治体にふるさと納税で寄付することで、自己負担額の2,000円を超えた部分が所得税から控除されます。
そして寄付金額に応じて返礼品がもらえるため、普通に所得税を支払うよりも返礼品の分だけお得になります。
返礼品の代表は、和牛ステーキやシャインマスカット、メロンや海産物など。どれも普通に買うと数万円するものが、実質2,000円の負担で手に入れられます。
返礼品の確認・ふるさと納税の手続きは、以下のサイトからおこないます。
ふるさと納税は、所得税の高い人ほど高額な寄付ができ、たくさんの返礼品がもらえる制度です。
ただ食品系の返礼品を選びすぎると、冷蔵庫に入りきらなくなります。大きい冷蔵庫を持っていない方は、旅行券やイベントチケットの方がおすすめ。
それとふるさと納税は全額控除ができる金額に上限があります。上限額は以下のページでチェックしておきましょう。
青色申告制度
青色申告制度は、白色申告より正確な確定申告を行うことで、追加の税制優遇を受けられる制度です。
主な特典はこちら。
- 青色申告特別控除:65万円、55万円、10万円の3種類の税控除
- 青色事業専従者給与:配偶者・親族への給与を経費にできる
- 貸倒引当金:引当金を必要経費にできる
- 純損失の繰越しと繰戻し:赤字を3年間繰り越し、黒字から控除できる
- 少額減価償却資産の特例:30万円未満の資産を一括で必要経費にできる
特においしいのが最大65万円の控除。
以下の条件に従って確定申告を行うことで、特別控除が受けられます。
引用:青色申告の特典
2つ目の青色事業専従者給与も便利で、家族を従業員にして給料を支払うことで、その支出を必要経費にできます。うまく活用すれば、多額の控除を受けられるでしょう。
なお青色申告を利用するには、その年の3月15日以内に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。
青色申告制度の詳細は、国税庁の「青色申告制度」でチェックしましょう。
住宅ローン減税
住宅ローン減税は、住宅ローンで住宅を取得したときに受けられる減税制度です。
1年ごとの控除金額は、住宅の所得価格か住宅ローン残高のどちらか低いほうの1%。これが10年間にわたって、所得税、住民税から控除されます。
例えば住宅ローンで4,000万円の住宅を手に入れた場合、1年間でその1%の40万円が控除され、合計10年で400万円相当の税控除が受けられるわけです。
住宅ローン減税を申請するだけで、国から実質的に数百万円もらえると考えれば、この制度がいかに破格であるかが分かるはずです。
さらに住宅ローン減税は、中古住宅にも適用可能。所得価格が1,000万円なら10年で100万円相当の税控除が受けられます。
ただし住宅ローン減税を利用する場合、申請者自らが居住することが前提となっており、不動産業などで他の人を住まわせる場合には適用されません。
数百万円の税控除が受けられることは、国から数百万円もらえるのと同じこと。住宅ローン減税は節税効果が非常に高いので、住宅を買うなら絶対に利用しましょう。
扶養控除
扶養控除は、16歳以上の親族やお年寄りを養っているときに受けられる控除制度です。
扶養控除の対象年齢や控除金額は以下の通り。
15歳以下の子供が扶養控除の対象とならないのは、子供手当てが代わりにあるため。子供手当てでは月額1万円から1万5千円が支給されます。
16歳以上の親族を養っているなら、扶養控除を利用しましょう。
ただし扶養控除は、扶養家族が副業やアルバイトなどで一定以上の金額を稼いでいると、対象外となるので注意しましょう。(副業で年間48万円以上、給与所得のみなら103万円以上)
小規模企業共済
小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主向けの積み立て退職金制度です。
掛け金は毎月1,000円から70,000円で、500円単位で調整可能。また掛け金は全額所得控除となるため、節税効果が非常に高いです。
節税金額の目安は、以下の表の通り。
引用:掛金について|中小機構
課税所得が1,000万円の場合、毎月7万円を積み立てることで37万円の節税効果が見込めます。
預けたお金は中小機構が運営をしており、運用先の8割は国内債券。運用利回りは0.5%から2%と低めですが、破綻リスクも低いです。
注意点は、65歳未満で解約すると、税法上不利な扱いを受けてしまうこと。
65歳以上で利用できる老齢給付なら「公的年金等の雑所得」扱いになりますし、65歳以上で解約すれば「退職所得」扱いになるため、受け取ったときに多額の控除を受けられます。
逆に65歳未満で解約すると、受取金が「一時所得」扱いとなり、退職所得よりも控除金額が少なくなってしまいます。
小規模企業共済は退職金制度なので、65歳以上で受け取るものと考えておきましょう。
経営セーフティ共済
経営セーフティ共済は、取引先が倒産したときに、自社が経営難に陥るのを防ぐための制度です。
取引先が倒産して売り上げなどを回収できなくなった場合、掛け金の10倍(最大8,000万円)まで共済金を借りられます。
掛け金は月額5,000円から20万円で、月額5,000円単位で調整でき、最大800万円まで積み立てられます。掛け金は必要経費(法人なら損金)にでき、節税効果も非常に高いです。
ただ経営セーフティ共済は事業を行っている中小事業者を対象としているため、FXトレーダーや投資家がその対象になるのかは微妙なところです。
社会保険料控除
社会保険料を支払った場合、その金額を所得から控除できます。
FXトレーダーが加入する社会保険は以下の2つ。
- 国民年金(基礎年金):年額最大20万円ほど/月額16,610円(保険料を見る)
- 国民健康保険(医療分+支援分+介護保険):年額最大97万円ほど
国民年金(基礎年金)は、真面目に払うのがおすすめ。支払った金額が全額控除となるため、節税効果が非常に高いです。
国民健康保険は、支払い金額が年間最大97万円と非常に高く、年金のように支払った金額が返ってくるわけでもありません。控除の対象とはいえ、なるべく支払わないようにしたいです。
国民健康保険が異様に高いのは、後期高齢者の支援分と介護保険が含まれているため。医療分だけなら年間50万円ですが、他の2つを合わせると年間100万円になってしまいます。
ご自身の健康に自信があり、貯蓄が十分にあるなら、意図的に健康保険を滞納して、支払い金額を減らすこともできます。
保険料を滞納すると、通常の健康保険証は使えなくなりますが、代わりの「短期証や資格証明書」を使えば、保険料の払い戻しを受けられます。
なお現行制度では、国保の保険料を支払っていなくても、原則1年未満の滞納者には(期間が1~3カ月の)短期証、1年以上の滞納者は資格証明書(医療機関での窓口負担が全額自己負担となり、後日、保険給付分の7割が払い戻される)が交付される。
もしくは意図的に健康保険に加入せず、医療費を実費で払う手もあります。比較的健康なうちの20代・30代のうちは健康保険に加入せず、健康リスクが高まる40代・50代から加入する感じですね。
ただ健康保険に未加入のまま再加入する場合、未加入期間(最大2年)の保険料を支払う必要もあります。
しかしこれも「アルバイト・派遣社員などで一時的に健康保険に加入する、他の地方自治体に転出する」などで、未加入期間をリセットすれば、未加入期間の保険料支払いを免れられます。
まとめ:まずは「つみたてNISA・iDeCo」で節税しよう
ここまで海外FXの個人トレーダー向けの節税方法を解説してきました。
海外FXトレードの収益は「雑所得」です。雑所得は「超過累進課税」が適用されるため、収益が大きくなると、税率も高くなり、納税額も高額になってしまいます。
納税額を少なくしたいなら、国が提供している節税制度で所得を圧縮しましょう。
おすすめの節税制度はこちら。
- iDeCo:掛け金がすべて控除になる
- つみたてNISA:非課税枠800万円の分配金・譲渡益が非課税
- ふるさと納税:2,000円の負担で数万円の返礼品を得られる
- 青色申告制度:最大65万円の税控除、親族への給与が経費に
- 住宅ローン減税:住宅価格の1%を控除(10年間)
この中でも最優先で使いたいのはiDeCo。掛け金すべてが控除となるため、節税効果が非常に高いです。
つみたてNISAだと非課税になるのは分配金と譲渡益だけですが、非課税枠が800万円と多く、手続きも簡単です。
ふるさと納税は寄付金が税控除になるだけですが、実質2,000円の負担で数万円以上の返礼品が受けられるため、納税額が多い人ほどお得です。
青色申告制度と住宅ローン減税も節税効果は高いですが、手続きが煩雑で、利用ハードルが高めです。まずは上の3つの節税制度を使ってからにしましょう。